【オンライン寺院を開設します!#2】日本のお寺は二階建て

こんにちは、僧侶の神崎修生です。

このたび、オンライン寺院を開設しました。

オンライン寺院とは、オンライン上のお寺です。そのコンセプトや概念をまとめてましたので、こちらに記しておきます。これは中編(#2)になりますので、前編(#1)も宜しければ、ご覧ください。

▼前編記事(#1)

▼音声や動画でご覧になりたい方はこちら

目次

  1. お寺へのイメージ
  2. お寺におきている環境変化
  3. 仏教やお寺に関心はないのか
  4. 日本のお寺は二階建て
  5. お寺の二階を設計する上での課題

お寺へのイメージ

皆さん、お寺というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?

死や葬儀、お墓といったイメージや、お年寄りが参拝するところというイメージもあられるかもしれません。また、お寺に入っていいのか分からない、敷居が高いといったイメージや、坊主丸儲けという言葉のイメージ、そもそもイメージがよく分からないという方もおられるでしょう。

一方で、落ち着く、癒やされる場所というイメージをお持ちの方や、お寺によく通われていて、心のよりどころになっているという方もおられます。

お寺におきている環境変化

お寺を取り巻く環境も、随分と変化をしてきています。お寺離れといって、お寺とのご縁の希薄化しているとも言われています(日本だけに関わらず、宗教離れがおきていると言われています)。皆さん、年間に何回程度、お寺に行かれますか?住職やお寺の方とは、どのくらいお話されますか?

ご葬儀やご法事、墓参などでのご縁がほとんどで、それ以外にお寺に行ったり、僧侶と話をするような機会はあまりないかもしれませんね。つまり、お寺との関係が日常生活の中にはなく、非日常化している方も多いと思います。


また、これまでほとんどのお寺は、檀家(門徒)という地域を主体にしたコミュニティによって支えられ、維持管理されてきました。しかし、核家族化や、移動社会化、お寺との関係性の希薄化などにより、檀家制が緩やかに崩れてきています。

そもそも、檀家(門徒)というお付き合いの仕方がひとパターンしかなく、成立してきていたのが不思議なのかもしれません。

また、過疎化、少子高齢化、人口減少などによって、地方に人がいなくなり、お寺も成り立たなくなるという事例も増えてきています。

葬儀や法事、遺骨などに対する価値観も変容してきています。

諸行無常(あらゆるものは移り変わっていく)なので当然なのですが、このようにこれまでお寺を成立させてきた基盤というものが揺らいできています。

仏教やお寺に関心はないのか

では、仏教やお寺に関心がないのかというと、一概にそうとも言えません。Googleでの検索ワードと検索数(検索ボリューム)を見てみると、仏教やお寺に関するワードを検索する方はかなり多いです。

また、御朱印や神社仏閣めぐりは、相当なニーズがあります。本屋さんに行くと、仏教本はかなりの数が揃えられています。

また、悩み相談や占いへの関心も高く、仏教的・お寺的なものも含めると、かなりの関心があることが分かります。


ただし、注意が必要なのは、仏教的なもの、お寺的なものに関心があるからといって、その方は、特定の宗教や宗派に所属したいとか、何宗の教えを信仰したいとか、お寺の檀家になりたいというわけではないことです。

しかし、お寺には、檀家という受け皿が一つしかなかったり、檀家以外の方が参加しやすいような機会が用意されていなかったりといったミスマッチがおきていることがお寺の課題といえます。

日本のお寺は二階建て

こうした課題を分かりやすく整理されているのが、僧侶の松本紹圭さんの「日本のお寺は二階建て」論です。

スライド14

少し、私の解釈も加えてお話をさせていただくと、檀家寺が中心としてきた「先祖、供養、檀家、遺骨、布教」などを、お寺の基礎や1階部分として捉え、「より良く生きる系、悩み事系」に対するものを、お寺の2階部分として捉え、整理分類したものです。

一階の「先祖、供養、檀家、遺骨、布教」というものは、これまでのお寺の中心と言える部分であり、未だ、多くの求めがある部分です。しかし、前述のように、環境変化の影響を大きく受けている部分であり、大きく見れば行き詰まりを見せている下降トレンドです。(大切ではないということではありません)

この一階での課題を1つあげるとすれば、遺族や門信徒(檀信徒)の思いや求めをくみ取り、葬儀、法事、納骨などを具体的に改善し続けられるかということです。


二階の「より良く生きる系、悩み事系」とは、より良く生きたいという思いを持った方や、悩みや不安を持った方に対する場です。

より良く生きる系について、もう少し補足すると、「幸せ、生き方、豊かさ、穏やかさ、充足、自分らしさ」などへの関心を持ち、より良く生きたいと思う方々のことです。

悩み事系とは、「健康、仕事、人間関係、お金、生き方、性格」などへの関心や悩み、不安などを抱えている方々のことです。

この二階部分の課題は、こうしたより良く生きたいという思いや、悩みや不安を抱えた方が、アクセスしやすい入り口の設計や、求めに応じた中身の設計です。


この二階部分の課題への私の結論をいうと、入り口の設計は、オンラインでおこなったほうが良いと思っています。中身の設計は、求めに応じた内容になっているかがポイントになります。

中身は例えば、より良く生きたいと思う方々には、マインドフルネスや坐禅、仏教講座、ワークショップなどが適しているでしょう。

悩みや不安を抱える方々には、相談や傾聴、対話、交流といった場づくりや、悩み事や健康などをテーマとした講座なども考えられます。

お寺の二階を設計する上での課題

このように、お寺への入り口の設計と、求めに応じた中身の設計が、この二階部分の具体的な課題ですが、もう少し詳しく見てみましょう。

二階を求める方(より良く生きたいと思う方や、悩みや不安を抱えた方)がいたとしても、お寺と接点を持てない理由(ハードルとなっているもの)が、大きく4つあります。

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◇二階を求める方が、お寺と接点を持てない1つ目の理由は、

①「二階の求め(より良く生きたいとか、悩みや不安を和らげたい)に応じた取り組みをしていない」

ということです。

これまで、ほとんどのお寺は、一階部分の「先祖、供養、檀家、遺骨、布教」といったことに注力してきました。そして、時代的にもそれを求められてもいました。

二階の求めに応じた取り組みをしていなければ、二階自体がなく、入り口もないですから、お寺と接点を持とうにも持つことはできません。そして、その求めを別のところで満たそうとするでしょう。

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◇二階を求める方が、お寺と接点を持てない2つ目の理由は、

②「お寺側が二階を用意しようと取り組んでも、提供している内容が求めるものと合致していない」

ということです。

これが多いパターンが、一階色の強い既存のお寺の取り組み(宗祖の法要への誘いや、檀家になってほしいなど)に、二階を求める方を誘導するものです。前述の通り、二階を求める方は、特定の教えを信仰したわけでも、檀家になりたいわけでもないので、ミスマッチがおきてしまいます。

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◇二階を求める方が、お寺と接点を持てない3つ目の理由は、

③「二階の求めに応じた素晴らしい取り組みを用意していても、発信していない、知られていない」

というものです。

お寺側から発信していなければ、必要な方に届くことはありません。

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◇二階を求める方が、お寺と接点を持てない理由の4つ目は、

④「お寺の敷居が高い」

というものです。

お寺は敷居が高いと言われることがあります。そのつもりはなくても、伽藍の重厚さや、門徒(檀家)が中心となっていることなどから、ご縁がない人にとって、お寺の門をくぐって飛び込んで行くには、相当なハードルの高さがあることでしょう。

お寺の人は、そのことを認識し、お寺に入りやすい、参加しやすい工夫をする必要があります。


おおよそ、このような理由(ハードル)があり、二階を求める方が、お寺と接点を持てないという事態がおきていると考えます。

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